全体主義の中国が追求しているデジタル覇権から、自由主義の国々を守ることにつながる英政府の判断を歓迎したい。
英政府が、次世代通信規格「5G」の整備をめぐり、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)製品を今年から段階的に排除する方針を固めた。英有力メディアが一斉に報じた。
今年1月に英政府は、5G網への華為製品の限定使用を認めた。米政府は華為製品使用による情報流出などのリスクを指摘し、排除を呼びかけていた。
その後、新型コロナウイルスをめぐる中国政府の「情報隠蔽(いんぺい)」による被害拡大や香港国家安全維持法の施行があり、対中不信感を強めた英政府は方針を転換した。
英国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)の報告書によると、5月に米政府が華為への米製品の輸出禁止措置を強化した影響で同社製品の安全性を保証できなくなったという。
ジョンソン英首相が「潜在的敵対国の企業に重要インフラを支配されたくない」と発言したことも報じられている。中国を「潜在的敵対国」とみなしたのは、安全保障を重視する観点からだ。
駐英中国大使は、「われわれを敵対国にするなら、報いを受けなければならない」と反発した。恫喝(どうかつ)的な言葉が中国の焦りを表している。
華為に代えて、英政府は日本のNECなど中国以外の国の企業と連携したい意向だ。先進7カ国(G7)にオーストラリア、韓国、インドを加えた民主国家10カ国「D10」の枠組みを結成し、中国のデジタル覇権追求に対抗する構想も模索している。
すでに、米国、日本、オーストラリア、台湾などが5Gで華為製品を排除している。英国が加わることで、この流れが加速することが期待される。
カナダの通信大手2社は5Gでスウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアと組むと発表した。ドイツの通信大手1社もエリクソン採用を決めた。フランスでも5Gでの華為製品使用や華為工場の建設を白紙に戻す検討が始まっている。
5G機器などの開発に向けNTTとNECが資本・業務提携した日本は国産技術を確立させ、英国など自由主義の国々の通信網構築に寄与していきたい。
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2020年7月12日付産経新聞【主張】を転載しています